自社ECを取り巻く要素
事業者(自社EC運営者)がオンラインで販売を行い、顧客が決済し、指定の配送先に商品を送る、もしくはサービスを提供する一連のやり取りをEC(Electric Commerce)と呼ぶ。上記の前段階(集客やマーケティング)、注文を受け付けるECサイト、受注後ユーザーに商品が届くまでの段階も含めて業務範囲は日々大きくなっている。 主要な要素とその連携を検討し、それぞれの仕様を詰めることによって、安定した質の良いECサイトを作る事が可能であるとともに全体的な事業改善、業務改善を行うことが可能である。
導線
ECサイトへの導線はメールであったり、広告であったり、コンテンツであったり多様になっている。ここでは主要なものを紹介する。
マーケティングツール
顧客とコミュニケーションし、ECサイトに呼ぶためのツールをマーケティングツールと総称する。 昨今では、チャット、かご落ちツール(カートに入れたまま購入しなかったユーザーのフォローツール)、 ステップメール(顧客を未購入者、初回購入者、常連など段階化してメールを送る)などがよく使われている。 顧客リストを持つCRMと連携して、機能することが多い。
メールマガジン
マーケティングツールに含んでよいものだが、ECサイトではメールマガジンは効果が出やすく、ここでは別途切り出した。 実際にはマーケティングツール同様にCRM(Customer Relationship Management※後述)と連携し、全ユーザーに一括であったり、顧客をセグメント分け(年齢、男女、地域、購入回数、購入カテゴリ)してリスト抽出し、メールを送る。
コンテンツマーケティング
オウンドメディア※のように企業がブログや企業サイトを通じて魅力的なコンテンツを発信しECサイトに勧誘する導線。 実際にはCMS(Content Management System※後述)やブログツールのようなものを用いて、情報発信する。情報リテラシーの低い社員でも情報を発信しやすくしたり、口コミを集めやすくするなど、力量次第でいかようにも伸ばすことが出来る。
SEO
検索結果の上位にいることは強いECサイトを運営するために必要不可欠である。 Googleにインデックスされやすくする技術的なこと(タグの作法、正しい構造化)と、競合他社に勝つために、どのキーワードを強化するか、その為のコンテンツ拡充などの対策が必要となる。Googleのサーチコンソールだったり、アナリティクスに関する知見が求められる。
SNS
Twitter,Facebook,Instagram,LINEなどのSNSツールから自社ECへの導線を確立している企業は、固定的なファンがついているという意味合いでも強い。SNSはユーザー層や商品の特性に応じて使い分ける形となる。製品のファンになってもらい継続的な双方向コミュニケーションをとるにはFacebookが適している。匿名的な嗜好を求める場合は、Twitterが効果的だったり、若い女性向けとなるとInstagramなど写真に特化したSNSが適している。若い女性にとってはファッション誌代わりにInstagramを活用しているなど、時代とともに使い方が変わっていく傾向がある。
広告
Googleの検索結果に表示されるテキスト広告やGoogleショッピングなど、強化するキーワードを決めて効果的にPDCAを回しながら運用していくことが求められる。特に駆け出しのECサイトは認知度に劣るため早い段階から少額でも始めることが望ましい。 また、CriteoのようなDSP(Demand Side Platform=広告枠を提供するプラットフォーム)を使って、Yahooのトップにリターゲティング広告をユーザーの閲覧履歴、趣向別に出すことも可能になっており、個人別に最適化された広告というものが伸びていく傾向にある。
ECサイト
実際に商品を売るのはECサイトとなるが、いくつかの主要な構成要素があるので説明する。
レコメンド
商品点数が多かったり、関連商品の提示や、あわせ買いを促進したい場合、レコメンド機能を利用する。 ユーザーの閲覧履歴や購入履歴と連携して動的にレコメンドするようなケースは、ツールもしくはAI的なサービスの導入を検討することが多い。ある商品を購入する際に関連して買うものが概ね決まっている場合は、運営側で関連商品として静的にECサイトで設定することが多い。
検索
商品点数が数千点、数万点など多い場合、検索機能の良しあしでサイトの使い勝手が決まる。検索を強化するためには、検索専用のサービスを別途導入することが多い。話題となる機能の一つにファセットがあり、カテゴリ別に切り口とその件数が表示されドリルダウンしていくことが出来たり、レビュースコア別の切り口でグルーピングしたり、価格帯でグルーピングしたりなど使い勝手を高めることが可能である。その他だと入力キーワードとのマッチがあるが、自社製品の特長に合わせた辞書が必要であったり、タイプミスした言葉をどこまでフォローできるかなど、突き詰めていくと必要な機能は尽きない。 ツールに頼らないやり方だと、商品に付随してマッチさせる検索キーワードを地道に充実させていくことも重要である。
決済
クレジットカード、銀行振込、後払い、携帯電話キャリア決済、Amazonペイ、楽天ペイ、LINEペイ、Appleペイ、PayPal、ペイジー、ビットコインなど支払い方法の多様化が進んでいる。入金方法が増えるのは便利な反面、確認方法は多様化するので、バックオフィスで働くメンバーの行効率なども踏まえて選択していくことになる。
自社EC
自社ECサイト。オープンソースでの構築、パッケージを購入しての構築、クラウドサービスを利用しての構築、完全スクラッチなどの手法があるが、それぞれ得手不得手があるので自社に合った方法を選択するように心がけたい。
モール
楽天、Amazon、Yahoo他、モールに商品を供給することは販路の拡大として効果が大きい。一方、自社サイトを含めてどこで売れようと在庫の管理、注文~出荷までの業務を統合する必要が出てくる。後述するBackOfficeやWMSでまとめて対応する事が一般的となる。
EC業務
コールセンター
IVR(Interactive Voice Response System※)を使って、電話番号をもとに顧客情報を引き出すような連携をする場合がある。 顧客の問い合わせを受けるには、顧客の情報(個人情報、注文履歴、問い合わせ履歴、FAQ、基幹システムの情報、顧客に代わってEC注文を行ったり、キャンセルする機能)等を組み合わせる必要がある。
会員サポート
コールセンター同様に、顧客に関する情報を閲覧しながら会員のサポートを行う。 顧客の問い合わせを元にFAQを作るサービスもあり、人的な対応を減らしていくことも重要な業務となる。
運用支援
広告の運用、商品情報の作成(写真撮影)など時間を要する業務は運用支援を行う企業にアウトソースすることも多い。
BackOffice
注文管理、商品管理、顧客管理、などECサイトを運用するための一連の業務を行うものを、ここでは総称としてBackOfficeと呼ぶ。業態によって追加の業務が存在する。例えば発注管理まで含んでいたり、デジタルコンテンツの場合はライセンス管理したり、原価管理したりなど。
BI・データ分析
BI(Business Intelligence)を利用してデータ分析を行う。結果として社内共有されるようなレポートが求められる。 アクセス、広告の効果測定、コンバージョン、顧客の各種属性(地域、年齢、性別)、購入商品など多岐にわたる。
基幹業務、物流
会員カード・ポイント
後述するPOSや基幹システムの機能を用いて、会員証の表示であったり、会員証やIDと連携してポイント機能を提供する。 会員証はiOSやAndoridのネイティブアプリ内に表示することが一般的になっている。
CRM
CRM(Customer Relationship Management)は顧客との関係を管理する機能を提供する。顧客との関係を親密にしたり、継続して購入や利用を続けてくれる関係を構築する。顧客管理という基本機能を元に、セグメント分けした対象を抽出してメールを送ったり、顧客の要望を吸い上げたりなど、する機能がある。
WMS
WMS(Warehouse Managiment System)は倉庫管理システムとして在庫の管理、出荷の管理などを行う。 入荷予定の管理、入荷処理、在庫を管理している棚やロケーションの管理、出荷管理(ピッキングリスト)、棚卸管理、スキャンする端末等の機能を提供する。
POS
POS(Point Of Sale)は、店舗で利用されるレジ端末。商品の価格、数量、値引きであったり、在庫管理、顧客の会員カードにポイントを付与するなどの機能がある。店舗を持つ企業がECを行う場合、O2O(Online to Offline)的な観点から、POSに付随する会員情報、購買情報、ポイント情報をEC側と連携することが顧客満足度を高める有効な手段となっている。
基幹システム連携
基幹システム連携については、以下で後述する。
越境
越境については日本から送るのか、現地拠点から送るのかで異なる。
配送
配送については、
- 商品が在庫品であるか調達するかでリードタイムが異なり
- 複数の商品がある場合、まとめてから送付するか
- どの配送業者から配送するか で配送日や送料が異なる。
発注
卸やメーカーに対して、自社倉庫にない商品を発注する。卸やメーカーから直送するか、自社倉庫に一度集めるかなど違いがある。 また、発注形態としてEDIもしくはFAX(自動FAX)、メール(自動メール)など業界の慣習によって異なる。 発注タイミングも日に一度や、一定量必要になってから発注など業務にあわせた制御が求められる。
会計
会計システムとの連携は、売上情報を連携するというシンプルなケースが大半。
外部リソース
配送業者
クロネコヤマトや佐川、もしくは自社で持っている配送サービスなどが一般的となる。
卸・メーカー
卸やメーカーに対して、自社倉庫にない商品を発注する。卸やメーカーから直送するか、自社倉庫に一度集めるかなど違いがある。 また、発注形態としてEDIもしくはFAX(自動FAX)、メール(自動メール)など業界の慣習によって異なる。
工場
自社工場や生産管理系の機能に対して、発注をかける。発注後、倉庫に入荷することになるわけだが、倉庫とのやり取りに関しては、入荷予定、検品用のバーコードが重要となる。